「集中できない選手」に対する脳科学的タイプ別アプローチ
2025/07/12
「集中できない選手」に対する脳科学的タイプ別アプローチ
*ポッドキャストを聴きながらご覧ください。
はじめに:集中力は性格ではなく“脳の使い方”で決まる
「集中しろ!」
そんな一言で、すべての選手が集中できるなら、誰も苦労しないでしょう。
スポーツにおける集中力とは、単なる“やる気”や“性格”の問題ではなく、脳の仕組みと感情の扱い方、そして環境要因の影響を受けています。
たとえば同じ指導をしても、ある選手はすぐ理解して反応できるのに、別の選手はキョロキョロして指示が入っていない……。それは「能力の差」ではなく、集中のしかたに個人差があるからです。
スポーツ現場における集中困難を「4タイプ」に分類し、
・なぜそのような状態になるのか?
・脳内では何が起こっているのか?
・どんなコーチング対応が有効なのか?
を、脳科学的な視点から解説します。
1|入力注意散漫タイプ:話が頭に入らない選手
このタイプは、指導者の言葉が“耳に入っても脳に届かない”という特徴があります。目の前で説明していても、目線が泳いでいたり、返事はするけど実行できない。実際には、外部刺激に対して注意を向ける「選択的注意力」が機能していない状態です。
脳の状態:
このとき脳内では、前頭前野と頭頂葉のネットワークが十分に働いておらず、さらに「RAS(網様体賦活系)」のフィルター機能が未発達な可能性があります。つまり、必要な情報と不要な情報を分けて処理できないのです。
有効なコーチング:
このタイプへの対応で重要なのは、「短く・視覚で・具体的に」伝えることです。説明に入る前に名前を呼び、目を合わせてから話すことで、注意の扉(RAS)を開ける準備が整います。また、指示は文字や図、ジェスチャーを使って、マルチモーダル(複数感覚)に伝えると、理解度と記憶定着が高まります。
2|持続力がもたないタイプ:途中で切れる集中力
一方で、「最初は集中していたのに、10分後にはボーっとしている」という選手がいます。こうした持続型の集中困難には、「脳のエネルギー切れ」が関係しています。
脳の状態:
集中の持続を司る前頭前野は、非常にエネルギーを使う領域です。ここが疲弊すると、ドーパミンの分泌が低下し、注意力・判断力・意欲が一気に落ちます。また、長時間にわたって脳を使うトレーニング経験が少ない選手ほど、集中の「スタミナ」が足りない傾向があります。
有効なコーチング:
持続型集中を鍛えるには、「時間を区切る・リズムを持たせる」ことが効果的です。たとえば、10分集中+2分ブレイク+10分集中…といったインターバル方式や、目標を小さく区切って「できた感」を積み重ねる設計が、脳を活性化させます。また、試合の後半で集中が切れがちな選手には、“脳の持久力”を養うトレーニングを意識的に取り入れると良いでしょう。
3|感情の波に飲まれるタイプ:不安やミスで集中が崩れる
試合中の緊張や、ちょっとした失敗でパフォーマンスが崩れる選手も少なくありません。このタイプは、「集中の持続」よりも、「感情の浮き沈みによって集中が乱される」ことが問題となります。
脳の状態:
強い緊張や失敗体験の直後には、脳内の【扁桃体】が活性化し、ストレス反応が優位になります。すると【前頭前野】による理性や判断のコントロールが利かなくなり、感情が行動を支配する状態となります。
有効なコーチング:
このタイプの選手には、感情の切り替えスキルを養うアプローチが必要です。たとえば、ミス後に「その感情を言語化する」ワークや、試合中に一呼吸を置くマインドセットの習慣化が有効です。また、「失敗は情報」と伝え、感情よりも次の行動に視点を向ける言葉がけ(例:「次どうする?」)が、選手の扁桃体の暴走を抑える効果を持ちます。
4|内的雑念タイプ:頭の中で考えすぎて止まる選手
「正しい判断をしよう」と意識しすぎて、逆に身体が動かなくなる -これは、考えすぎによる“集中の逆効果”です。プレー中に頭の中で自分と会話してしまい、“いま、ここ”に注意が向いていない状態です。
脳の状態:
このタイプは、【内側前頭前野】や【デフォルトモードネットワーク(DMN)】が過活動の状態にあります。DMNは「内省」や「自己評価」に関わるネットワークであり、これが試合中に働きすぎると、身体の感覚や反応が鈍くなります。
有効なコーチング:
この選手には、「頭よりも身体で覚える」アプローチが有効です。たとえば、判断の余地がない即時反応のトレーニングや、「感じたまま動く」反復練習によって、外的注意の再学習を行います。また、試合前に呼吸法やマインドフルネスを取り入れ、脳内のDMNを鎮める準備も大切です。
おわりに:集中力の違いは「才能」ではない
選手の集中力の問題を「性格」や「やる気の問題」として片づけてしまうのは、もったいないことです。
脳は可塑性を持つ器官であり、正しい理解と対応によって集中力は伸ばせるスキルなのです。
私たち指導者にできることは、選手の“できていない部分”ではなく、“まだ整っていない脳の状態”に寄り添うことです。
その視点の転換こそが、個々の選手の潜在能力を引き出す、真のコーチングの第一歩となるでしょう。
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