人材育成シリーズ(コーチ・管理職)・・・“エフィカシー”を知る①
2022/10/05
人材育成シリーズ(コーチ・管理職)・・・“エフィカシー”を知る①
1 エフィカシーとは
2 セルフ・エフィカシーについて
3 コーチングにおけるエフィカシーの考え方
4 エフィカシー(自己効力感)とセルフエフィカシー(自己肯定感)の違い
この「エフィカシー」は、人材育成(コーチング)において欠かせない言葉(概念)であります。
今回、この言葉について解説していきたいと思います。少し、回りくどい形なっておりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
1 エフィカシーとは
「エフィカシー」とは、カナダ人の心理学者であり、現代の社会学習理論の基礎を作ったアルバート・バンデューラ(スタンフォード大学)氏が提唱したものです。著書「激動社会の中の自己効力」では、エフィカシーについて「非常に困難な問題を解決しなければならないという状況下にあっても積極的に取り組もうという意欲」と表現しております。語源となる英語のefficacyには、「自分の能力を評価する」という意味があります。
2 セルフ・エフィカシーについて
一般的に「エフィカシー」と言う言葉は、心理学用語としての「セルフ・エフィカシー(self-efficacy)」という意味合いで使われることが多いようです。
セルフ・エフィカシーを日本語では「自己効力感」と訳されることが多く、「自分がある状況において、必要な行動を上手く遂行できるか」という解釈になります。
バンデューラ氏が解いた社会的学習理論では「結果要因」「先行要因」「認知的要因」の3つの要因が人間の行動を決定すると言及しております。そして、先行要因のうちの「予期機能」には、「効力予期」と「結果予期」の2つがあると述べております。
結果予期:ある行動がある結果を生み出すという推測のこと
効力予期:ある結果を生み出すために必要な行動をうまく行うことが出来るという確信のこと
よって、エフィカシーとは、ある結果を生み出すために適切な行動を遂行できるという確信の程度、つまり自分が効力予期をどの程度持っているかを認知することになります。
端的にいうとなると「自己能力の自己評価」ということになります。
3 コーチングにおけるエフィカシーの考え方
コーチング(人材育成のための)の世界でのエフィカシーの捉え方について解説すると、コーチングにおいて“ゴール達成”は必須になりますので、"ゴールを達成する自己能力の自己評価”ということになります。よって、コーチングの一番重要なことは「ゴール」であるため、よってコーチングとは「エフィカシーを上げることが重要な作業」ということになります。
4 「エフィカシー」と「セルフエスティーム」の違い
この「エフィカシー:自己効力感」と混同されやすいのが、耳馴染みの多い「セルフエスティーム:自己肯定感」があります。
自己肯定感(self-esteem)は「自分の価値や存在を肯定的に捉えること」を意味しており、エフィカシーとは同意語ではありません。一見すると自己肯定感も同じように「自信」を指していますが、自己肯定感は「過去や現在」に対する自信であり、エフィカシーは「未来」に対する自信になります。エフィカシーが自己効力感と言われるのは、そこには根拠のない自信も含まれるからです。
エフィカシーは、未来に向けた自己能力への自信であり、どんなことでもやり遂げるためには、自分の力を信頼して活動することが重要です。エフェカシーを発揮するには、「今のスキルや経験を活用すれば成功できる」と自らの力で確信させる必要があります。現実的に成功するには、この力の定着化と信じる強さが大切な要因なのです。
少し回りくどくなりましたので、簡単に整理してみると
・自己効力感:できると自分を信じられる力
・自己肯定感:できても、できなくても、ありのままの自分を受け入れられる力
になります。
要するに、自己効力感は「自分自身の能力に対する自己評価」であり、自己肯定感は「自分自身の存在そのものに対する自己評価」、言い換えれば「在り方への自信」ということになります。
以上、違いについて解説致しました。言葉の意味や定義、そして概念を理解するのはいつも難しさを感じます。人の伝え方、そして解釈によっても、また違ってくるものです。
いずれにせよ、自己実現には両者の力は必要不可欠です。自己をコントロースするためにも、使い分けができる自分であってください。
人材育成シリーズ(コーチ・管理職)・・・“エフィカシー”を知る① 終わり ②へ続く
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