パフォーマンスを発揮できる選手とは
2026/10/13
パフォーマンスを発揮できる選手とは
― 自分を知り、自分を育て、自分を動かせる選手 ―
はじめに|同じ練習をしているのに、なぜ差が生まれるのか?
同じチームで、同じ時間、同じ練習をしている。
それなのに、どんどん成長する選手もいれば、なかなか成長できない選手もいます。
また、練習では上手にできるのに、試合になると力を発揮できない選手もいます。
この違いは、いったいどこから生まれるのでしょうか。
もちろん、技術や体力、経験の違いもあります。
しかし、それだけでは説明できない部分があります。
それは、「自分自身との向き合い方」です。
・自分のことをどれだけ理解しているのか。
・自分はどうなりたいと思っているのか。
・うまくいかないとき、自分をどのように動かしているのか。
今回は、パフォーマンスを発揮する選手が身につけておきたい「6つの力」について、fine理論の視点から考えてみましょう。
1.なりたい自分を描く力
― あなたは、どんな選手になりたいですか? ―
「もっと上手になりたい」
「試合に出たい」
「レギュラーになりたい」
このような目標を持っている選手は多いと思います。
では、もう少し詳しく考えてみましょう。
あなたは、どんなプレーができる選手になりたいのでしょうか。
どんな場面で活躍したいのでしょうか。
仲間から、どんな選手だと思われたいのでしょうか。
例えば、バスケットボール選手なら、
「試合の大事な場面でも、落ち着いて判断できる選手になりたい」
「仲間が困っているときに、声をかけられる選手になりたい」
「相手が強くても、自分から積極的にプレーできる選手になりたい」
このように、なりたい自分の姿を具体的に描くことができます。
これを「セルフイメージ」といいます。
大切なのは、単に成功している自分を想像することではありません。
その姿に近づくために、今の自分は何をすればよいのかを考えることです。
目指す姿が見えてくると、毎日の練習にも意味が生まれます。
何のために練習するのか。
何を身につけたいのか。
その答えを、自分自身で持てるようになるのです。
2.自分の課題を見つける力
― 自分の「できない」を知ることは、成長の始まり ―
練習や試合が終わったとき、あなたは何を考えていますか?
「今日はシュートが入らなかった」
「パスをミスしてしまった」
「監督に注意された」
このように、できなかったことを思い出す選手は多いでしょう。
しかし、ここで考えてほしいことがあります。
「できなかったこと」と「自分の課題」は、必ずしも同じではありません。
例えば、シュートが入らなかったとします。
これは「結果」です。
では、なぜ入らなかったのでしょうか。
シュートフォームが崩れていたのか。
相手のディフェンスに慌ててしまったのか。
それとも、打つタイミングが悪かったのでしょうか。
このように、結果だけを見るのではなく、その原因を考えることが大切です。
そして、原因を考えるときには、自分を責める必要はありません。
「自分は下手だ」と考えるのではなく、「次は何を変えればよいだろう」と考えるのです。
成長する選手は、ミスを自分への悪い評価で終わらせません。
ミスを、次の成長につながる情報に変えられる選手です。
これが、自分の課題を見つける力です。
3.自分から成長を求める力
― 「やらされる練習」と「自分から取り組む練習」 ―
同じ練習でも、選手によって取り組み方は違います。
ある選手は、指導者に言われたから練習します。
別の選手は、自分が上手になるために練習します。
どちらも同じメニューをこなしているかもしれません。
しかし、練習に対する考え方は違います。
「早く終わらないかな」
そう考えている選手と、
「今日は、この動きをできるようにしよう」
そう考えている選手では、練習中に注目することも変わってきます。
ここで大切になるのが、「自己成長欲求」です。
これは、自分自身が成長することを求める気持ちです。
人から褒められるためだけではなく、自分ができるようになることに価値を感じる。
昨日できなかったことが、今日少しできるようになる。
その小さな変化を、自分の喜びにできるのです。
もちろん、誰でも練習したくない日はあります。
疲れている日も、気分が乗らない日もあるでしょう。
それでも、自分が成長したい理由を持っている選手は、気分だけに左右されず、必要な行動を選びやすくなります。
成長する選手は、誰かに成長させてもらうのを待つだけではありません。
自分から成長する機会を探していくのです。
4.今の自分を認める力
― 自分を認めることは、甘やかすことではない ―
あなたは、ミスをした自分をどのように受け止めていますか?
「自分はダメだ」
「どうせ自分にはできない」
「自分には才能がない」
このように考えてしまうことはありませんか。
しかし、ここには一つの大きな問題があります。
それは、一つの失敗で、自分という人間全体を否定してしまうことです。
シュートを外した。
これは事実です。
しかし、「自分はダメな選手だ」というのは、その事実に対する解釈です。
fine理論では、この「事実と解釈」を分けることを大切にしています。
シュートを外したことは認める。
でも、それだけで自分の価値が下がるわけではありません。
今の自分に足りないものがあることも認める。
同時に、これまで積み重ねてきた努力や、できるようになったことも認める。
これが、自分を肯定する力です。
自己肯定とは、「自分は何でもできる」と思い込むことではありません。
できる自分も、できない自分も受け止めながら、成長できる自分を信じることです。
自分を認めることができれば、失敗を必要以上に恐れず、次の挑戦に向かいやすくなります。
5.自分を喜ばせる方法を知っている
― 自分の心を、自分で整えられますか? ―
ここは、特に大切にしてほしい部分です。
あなたは、どんなときに喜びを感じますか?
試合に勝ったときでしょうか。
シュートが決まったときでしょうか。
監督やコーチに褒められたときでしょうか。
もちろん、それらも大切な喜びです。
しかし、スポーツでは、いつも良い結果が出るとは限りません。
試合に負けることもあります。
思うようにプレーできないこともあります。
誰からも褒められない日もあるでしょう。
もし、自分の喜びが「勝つこと」や「褒められること」だけにあるとしたら、結果や周囲の評価によって、気持ちが大きく揺れてしまうかもしれません。
そこで考えてほしいのです。
「今日、自分が成長したことは何だろう」
「昨日より、少しでもできるようになったことは何だろう」
「今日の練習で、自分が納得できたことは何だろう」
自分の成長や挑戦に喜びを見つけることができれば、結果が出ない日にも、次に向かう力を得られます。
そして、疲れたときには休む。
不安なときには呼吸を整える。
気持ちが乱れたときには、何が起きているのかを考える。
このように、自分の状態に気づき、必要な行動を選ぶことも大切です。
自分を喜ばせることと、自分を整えること。
この二つを少しずつ身につけることが、安定したパフォーマンスにつながっていきます。
6.自分で考え、自分で動く力
― 「自走する選手」になろう ―
ここまで、5つの力について考えてきました。
自分の課題を見つける。
なりたい自分を描く。
自分から成長を求める。
今の自分を認める。
自分の喜びや状態を理解する。
では、これらの力を身につけた選手は、どのように変わっていくのでしょうか。
その一つの姿が、「自走する選手」です。
自走とは、指導者から何も教わらず、一人ですべてを決めることではありません。
必要なときには教わる。
わからないことがあれば質問する。
仲間の意見にも耳を傾ける。
そのうえで、自分で考え、判断し、行動できることです。
例えば、練習中にミスをしたとします。
自走する選手は、指導者に注意されるまで待つだけではありません。
「今のミスは、何が原因だったのだろう」
「次は、どうすればよいだろう」
そう考えて、次のプレーで試してみます。
うまくいかなければ、また考えます。
そして、必要なら指導者に質問します。
つまり、考える → 決める → 動く → 振り返る → 修正する。
この繰り返しができる選手です。
指導者が見ていないときにも、自分に必要な練習を考えられる。
試合中に予想外のことが起きても、自分で次の行動を選べる。
これが、自走する選手の大きな特徴です。
7.本当に強い選手は、環境が変わっても自分を見失わない
ここで、もう一つ考えてみましょう。
普段の練習では、自分で考えて行動できる選手がいます。
ところが、大きな大会になると、急に消極的になってしまう。
相手が強いと、いつものプレーができなくなる。
審判の判定に納得できないと、イライラして集中力を失ってしまう。
このような経験はありませんか。
スポーツでは、いつも同じ環境でプレーできるわけではありません。
時間も、場所も、相手も、状況も変わります。
その変化の中で、自分の状態を理解し、必要な行動を選ぶことが重要になります。
fine理論では、これを「社会力」という考え方で捉えています。
社会力とは、時間・場所・相手・状況が変わっても、自分の持っている力を安定して発揮するための力です。
もちろん、人間ですから、緊張することも、不安になることもあります。
大切なのは、緊張しない選手になることではありません。
緊張している自分に気づき、その中で何をすればよいのかを考え、行動できる選手になることです。
自分の状態を完全にコントロールすることはできなくても、次に取る行動を選ぶ練習はできます。
それが、本番で自分の力を発揮するための準備につながっていくのです。
8.今日からできる「自分を育てる6つの質問」
練習や試合が終わったら、次の質問を自分に投げかけてみてください。
- 今日の自分の課題は何だっただろう?
結果だけでなく、次に改善できることを探してみよう。 - 自分は、どんな選手になりたいのだろう?
目指す姿を、できるだけ具体的に考えてみよう。 - 今日、自分から成長するために取り組んだことは何だろう?
誰かに言われたこと以外にも目を向けてみよう。 - 今日の自分で、認めてあげたいことは何だろう?
小さな努力や挑戦も見つけてみよう。 - 今日、自分が喜びを感じたことは何だろう?
結果だけでなく、成長や発見にも目を向けてみよう。 - 明日、自分で考えて取り組むことは何だろう?
具体的な行動を一つ決めてみよう。
すべてに立派な答えを出す必要はありません。
大切なのは、毎日少しずつ自分に問いかけることです。
①自分のことを知ろうとする。
②自分の考え方(解釈)に気づく。
③自分の行動を振り返る。
その積み重ねが、自分自身を育てる練習になります。
おわりに|あなたの成長を支えるのは、誰ですか?
スポーツの世界には、優れた指導者がいます。
技術を教えてくれる人がいます。
励ましてくれる仲間や、応援してくれる家族がいます。
その存在は、とても大切です。
しかし、どれだけ周囲の人が支えてくれても、最後にプレーするのは自分自身です。
試合中に判断するのも、自分です。
失敗した後、もう一度挑戦するのも、自分です。
だからこそ、自分を知る力が必要なのです。
・自分の未来を描く。
・自分の課題を見つける。
・自分から成長を求める。
・今の自分を認める。
・自分の喜びを知り、状態を整える。
・そして、自分で考え、自分で動く。
これらの力は、最初からすべて備わっている必要はありません。
日々の練習や経験の中で、少しずつ育てていくことができます。
上手な選手になることも大切です。しかし、自分を成長させられる選手になることは、もっと長い未来につながります。
最後に、一つだけ質問します。
「あなたは今、自分を成長させるために、何をしていますか?」
その問いに、自分なりの答えを持つこと。
そこから、自走する選手への成長が始まるのではないでしょうか。
fine lab.代表 森 億
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