「わかっている」で、成長を止めていませんか?
2026/10/11
「わかっている」で、成長を止めていませんか?
― 「知っている」を「できる」に変えるために ―
「もっと上手くなりたい」
「試合に出たい」
「チームで活躍したい」
そう思っているのに、コーチからアドバイスを受けると、こんな言葉が出てしまうことはありませんか。
「それは知っています」
「わかっています」
「今、やろうと思っていました」
上達したい気持ちは、本当だと思います。
では、なぜ、自分が成長するための話なのに、聞きたくなくなるのでしょうか。
そこには、「上手くなりたい気持ち」と「今の自分を守りたい気持ち」が関係していることがあります。
1.アドバイスが「自分への否定」に聞こえるとき
たとえば、パスをカットされたあとに、コーチからこう言われました。
「パスを出す前に、相手の位置を確認しよう」
そのとき、頭の中にこんな言葉が浮かぶかもしれません。
「自分だって見ていたのに」
「できない選手だと思われた」
「自分だけ注意されている」
すると、パスを改善する話だったはずなのに、自分を守るための言い返しが始まります。
ここで分けてみたいのが、「実際に言われたこと」と「自分が受け取った意味」です。
実際に言われたのは、「相手の位置を確認しよう」。
「できない選手だと思われた」は、自分の中に生まれた解釈です。相手が本当にそう思っているかは、まだわかりません。
もちろん、厳しい言い方をされて、傷つくこともあります。それでも、少し落ち着いてから「何を直すように言われたのだろう」と確認できると、次のプレーに使える情報が見つかることがあります。
2.「知っている」と「できる」は違います
「周りを見ることが大切」
これは、多くの選手が知っています。
しかし、相手に囲まれたとき。試合の残り時間が少ないとき。ミスをして焦っているとき。
そんな場面でも、周りを見られるでしょうか。
方法を知っていることと、その場面で実行できることには、違いがあります。
成長には、次のような段階があります。
- 知っている: 方法や言葉を知っている。
- わかっている: なぜ必要なのか説明できる。
- できる: 実際のプレーで実行できる。
- 安定してできる: 相手や状況が変わっても実行できる。
練習でできたことが、試合ではできないこともあります。
それは、練習が無駄だったということではありません。次に練習する課題が見つかったということです。
「わかっています」と言いたくなったら、こう問い直してみてください。
「今の場面では、どこまでできていたかな?」
3.上手くなる途中には、うまくいかない時間があります
活躍する姿を想像すると、わくわくします。
でも、その姿に近づく途中には、できていないところを確認したり、慣れた動きを変えたりする時間があります。
新しい方法を試したら、一時的にやりにくくなることもあります。
そのときに、
「前のやり方のほうが楽だ」
「失敗するところを見られたくない」
と感じるのは、不思議なことではありません。
人には、慣れた方法や、自分への評価を守りたい気持ちがあります。脳の働きにも、学ぶことだけでなく、不安や嫌な気持ちへの反応が関わっています。
ただし、話を聞けなかったからといって、「脳に問題がある」ということではありません。
大切なのは、自分を守りたくなったことに気づき、そのあと何をするかです。
「ちょっと嫌な気持ちになった。でも、一つ試してみよう」
その選択が、成長につながります。
4.話を聞くことは、すべてをそのまま受け入れることではありません
アドバイスを聞いても、意味がわからないことがあります。自分の感覚と合わないこともあります。
そんなときは、質問してかまいません。
「今のプレーの、どの場面ですか?」
「次は、何を変えればいいですか?」
「自分はこう考えていました。どこが違いましたか?」
自分の考えを持つことは大切です。
そのうえで、相手の話を最後まで聞き、意味を確認し、試した結果を振り返る。そうすると、自分の考えも深まります。
人格を傷つける言葉や、危険な指示まで受け入れる必要はありません。困ったときは、信頼できる大人に相談してください。
5.「わかっています」のあとに、一歩を加えよう
「わかっています」という言葉だけでは、次の行動が決まりません。
そこに、一歩を加えてみましょう。
「わかっています。次は、受け取る前に一度周りを見ます」
「知っています。でも、焦るとできなくなります。練習方法を教えてください」
「今はうまくできませんでした。もう一度試してみます」
うまく返事をすることが目的ではありません。
何を試すかを、自分で決めることが目的です。
練習のあとには、三つだけ振り返ってみてください。
- 今日、どんなアドバイスを受けたか。
- それを聞いて、自分はどう感じたか。
- 次の練習で、何を一つ試すか。
嫌だった気持ちも、隠さなくてかまいません。その気持ちと、次に取り組むことを分けて考えてみましょう。
「知っている」を、プレーに変える
fine理論では、時間・場所・相手・状況が変わっても、自分の力を安定して発揮できる力を「社会力」と捉えています。
その力を育てるには、知識を持つだけでなく、さまざまな場面で試し、振り返り、修正していくことが必要です。
アドバイスを受けて、むっとする日もあるでしょう。
そんな自分に気づいたら、一度息を吐いて、考えてみてください。
「この話から、次の自分に使えることは何だろう?」
「知っている」の先に、「試してみる」があります。
その一歩が、「できる自分」を育てていきます。
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